The KIMONO Collection(着物コレクション)対象作品: The KIMONO Collectionは、人間国宝をはじめとする日本最高峰の染織作品を永く保存・継承するためのコレクション事業です。
The KIMONO Collection の作品は、店舗「呉服の藤和」にてご覧いただけます(予約サイトはリンクをクリックください)。
作品をゆっくりとご鑑賞いただくため、ご来店は予約制とさせていただいております。
私どもが何より願っておりますのは、これらの貴重な作品が、次代へと大切に受け継がれていくことです。末永くご愛蔵いただける方とのご縁を第一に考えておりますので、お迎えをご希望の際は、その趣旨も含め、お気軽にご相談ください。ご縁の内容に応じて、個別にご案内申し上げます。
山口伊太郎(やまぐちいたろう)について
山口伊太郎(1901から2007)氏は、20世紀日本を代表する西陣の織匠であり、文様織物制作の第一人者として高く評価されている存在です。京都・西陣に生まれ、生涯にわたり織物の可能性を追究し続けました。また、戦後は西陣織工業組合の設立や業界振興にも尽力し、西陣文化の発展に大きく貢献しました。
山口伊太郎氏の創作理念は、単なる伝統の継承にとどまりませんでした。古典意匠を深く研究しながらも、それを現代の感性によって再構築し、新たな美を創造することを目指しました。とりわけ、「古いものを写すだけでは意味がない」という信念のもと、伝統技術と独創性の融合に挑み続けたことが特徴です。
晩年には、織物による絵画表現の極致ともいえる『源氏物語錦織絵巻』の制作に取り組み、染織工芸の新たな可能性を切り開きました。その作品群は工芸品としての機能を超え、日本美術の文脈においても高い評価を受けています。
山口伊太郎氏は、西陣織の伝統を守り継いだ職人であると同時に、その未来を切り拓いた芸術家でもありました。その創造性と探究心は、今日なお多くの染織家や研究者に影響を与え続けています。
山口伊太郎 略歴
明治34年(1901年)12月18日
京都市上京区上立売通堀川西入に生まれる
大正2年(1913年)3月
京都市立成逸尋常小学校卒業
大正2年(1913年)4月
西陣織物製造業佐野商店へ入店
大正9年(1920年)7月
京都市上京区大宮通寺之内上る西入東千本町において、山口織物所として西陣織物高級帯地製造業開業(※ その後、戦中に廃業)
昭和26年(1951年)9月
西陣織物同業会の創立に参加
昭和28年(1953年)5月
西陣織物同業協同組合設立に参加
昭和29年(1954年)4月
西陣織物同業協同組合理事長に就任
昭和29年(1954年)10月
紫紘株式会社を創立、代表取締役社長に就任
昭和33年(1958年)7月
西陣織物工業組合理事に就任
昭和37年(1962年)4月
同組合顧問に就任、京都府伝統工芸士選定委員歴任
昭和37年(1962年)
財団法人西陣織物館の設立に参加
昭和45年(1970年)
「源氏物語錦織絵巻」の製作を開始する
紫紘株式会社代表取締役会長に就任
昭和46年(1971年)10月
財団法人西陣織物館理事長に就任
昭和60年(1985年)11月
財団法人西陣織物館理事・名誉顧問に就任
昭和61年(1986年)5月
「源氏物語錦織絵巻」全四巻のうち第一巻を完成する(竹河の巻他)
平成2年(1990年)10月
「源氏物語錦織絵巻」全四巻のうち第二巻を完成する(宿木の巻他)
平成4年(1992年)10月
京都府立 文化博物館において「源氏物語錦織絵巻」展を開催
平成7年(1995年)4月
フランス国立ギメ東洋美術館(Mus〓e des Arts asiatiques-Guimet)に「源氏物語錦織絵巻」第一、二巻を寄贈
(※フランス国立ギメ東洋美術館は、フランスのパリにある東洋美術専門の国立美術館。実業家エミール・ギメが収集した美術品を基に設立され、後にルーヴル美術館からアジア美術コレクションが移管されたことで、世界有数のアジア美術のコレクションとなる)
平成13年(2001年)5月
「源氏物語錦織絵巻」全四巻のうち第三巻を完成する(鈴虫の巻他)
平成14年(2002年)
フランス国立ギメ東洋美術館に「源氏物語錦織絵巻」第三巻を寄贈
平成15年(2003年)
京都市、平安神宮会館において「山口伊太郎安次郎二百歳記念」展を開催
東京都、大倉文化財団大倉集古館において「山口伊太郎安次郎二百歳記念」展を開催
平成17年(2005年)
静岡県三島市、佐野美術館において「山口伊太郎・山口安次郎の世界」展を開催
平成19年(2007年)
6月27日未明、自宅にて逝去(享年105)
平成20年(2008年)
「源氏物語錦織絵巻」全四巻のうち最終巻が完成する(蓬生の巻他)
京都市、相国寺・承天閣美術館において遺作展「山口伊太郎遺作展 源氏物語錦織絵巻」展を開催
フランス国立ギメ東洋美術館に「源氏物語錦織絵巻」最終巻となる第四巻を寄贈
平成21年(2009年)
東京都、大倉文化財団大倉集古館において「山口伊太郎遺作 源氏物語錦織絵巻」展を開催
フランス国立ギメ東洋美術館において「Au fil du Dit du Genji - Hommage 〓 Ma〓tre Yamaguchi'」展を開催
「山口伊太郎(やまぐちいたろう)」の袋帯「五重の塔」について(詳細ページはリンクをクリックください):
「五重の塔」は、山口伊太郎氏が日本建築の美を主題として創作した袋帯の秀作です。日本文化を象徴する建築意匠を大胆かつ洗練された構成によって表現し、伝統と創造性が見事に融合した作品として高く評価されています。
帯地には、金を基調とした静謐な空間の中に、朱塗りの五重塔の屋根が斜めに大きく配されています。幾重にも重なる屋根の力強い線は、見る者の視線を自然に導き、建築物が持つ荘厳な存在感と美しい律動を感じさせます。塔そのものの全景を描くのではなく、屋根の連なりという特徴的な部分に焦点を当てることで、山口伊太郎氏ならではの大胆な意匠構成が生み出されています。
五重塔は、仏教文化とともに日本へ伝来し、千年以上にわたり受け継がれてきた建築様式です。その優雅な姿は、日本人の精神文化や美意識を象徴する存在として親しまれてきました。本作においても、朱色の屋根と金地との鮮やかな対比によって、古都の寺院に差し込む光や、歴史の重みを感じさせる格調高い世界観が表現されています。
また、屋根瓦の一枚一枚に至るまで緻密に織り上げられた意匠には、西陣織の高度な技術が存分に発揮されています。規則正しく繰り返される瓦の表現は、建築の構造美を際立たせると同時に、帯全体に豊かなリズムと奥行きを与えています。
山口伊太郎氏は、生涯にわたり古典美術や歴史的文化財を研究し、それらを単なる復元ではなく、新たな芸術表現として再創造することに力を注ぎました。「五重の塔」においても、伝統建築を題材としながら、現代的な構図感覚と装飾美によって新しい魅力を引き出しています。
「五重の塔」は、日本建築が持つ荘厳さと優美さを織物の中に凝縮した作品です。静けさの中に力強さを秘めたその表現は、日本文化への深い敬意と山口伊太郎氏の卓越した美意識を伝えるものであり、同氏の代表的な建築意匠作品の一つとして位置づけられます。
「山口伊太郎(やまぐちいたろう)」の袋帯「五重の塔」です
「五重の塔」は、山口伊太郎氏が日本建築の美を主題として創作した袋帯の秀作です。日本文化を象徴する建築意匠を大胆かつ洗練された構成によって表現し、伝統と創造性が見事に融合した作品として高く評価されています。